2017/02/20
花や緑によるQOL改善セミナーを花屋視点で考察~売ることだけではなく伝えることが大切~
花や植物がもたらすQOL改善とは
長年花の仕事をしているので常々その効果効能は実感しているのですが、それが実際どのように作用しているのかはあまり知りませんでした。
ギフト用の花を中心に製作販売しているので花の効果効能というよりも、色や形など見た目から感情を高めたり穏やかにしたり喜ばれたりということが中心なので。
今回の東京都花き振興協議会主催の「花や植物がもたらすQOL改善セミナー」は普段の用途とはまったく違った角度から花を見ることができてとても有意義でした。
*QOL=Quolity of Life=生活の質
園芸福祉という活動
いきなりグラフでスミマセン。
まず、特定非営利活動法人・日本園芸福祉普及会理事長の吉長成恭氏がさまざまなデータをもとに国民の豊かさについての分析と園芸福祉活動について講演されました。
上のグラフは生活満足度と一人当たりの実質GDPの推移ですが、生活満足度は1958年から2010年までほとんど変わってません。
実質GDPがうなぎのぼりに高くなっているのに比べてその差はどんどん広がっていることがわかります。
こちらのグラフは心の豊かさとモノの豊かさとどちらを重視しますかという割合です。
1978年を境にモノの豊かさより心の豊かさを重視する人がどんどん多くなってきていますね。
心の豊かさを実感するための手段として園芸活動に取り組んでいる方々のデータです。
定期的に活動している人もそうでない人もおおむね同じ結果になっていますが、いずれも人生における目的や人格的な成長を実感しているようです。
こちらは人数的なもので図ったグラフです。
20人以上で園芸活動を行う方々は少人数で活動をしている方々よりも自己受容が高く、自律性以外は実感値が少し高くなっています。
3つのグラフの中でいちばん顕著なのがこれでした。
園芸活動を5年以上続けている方ほど豊かさの実感値がとても高まっていることがわかります。
ということは、日常生活の中に常に園芸という植物と触れ合ったり世話をしたりする作業があると幸福度が高まるともいえるかも。
吉長氏の話によると高齢者でおこなった調査によると
*ボランティア活動に参加する率が多いほど要介護が減少している
*定期的に園芸活動している人ほど幸福度が高い
*長期(5年以上)続けている人ほど人生における目的を持っている人が多い
高齢になっても介護がほとんど必要のない日常生活を、しかも幸せな気持ちでおくることができるのなら一つの手段として園芸福祉活動はとても有効なのですね。
花の力を借りて生きる力を引き出すフラワーファシリテーター
一般社団法人フラワーライフスタイリスト協会の武山直義氏の講演では、人と花のかかわりの歴史から花を育てたり愛したりする気持ちは生きる力になるという内容でした。
こちらも高齢者の方々に対して安全に楽しく花とかかわってもらいたいという取り組みをしていて、園芸ではなくフラワーアレンジメントを通しての活動です。
この活動を推進していく役割として「フラワーファシリテーター」という資格制度を立ち上げています。
介護レベルに分けて調査した結果、介護状態にかかわらず女性の70%は切花に関心を持っていますが介護レベルが上がるとともに手間がかかるものや世話が必要なものには関心が低下。
とはいえ切花はダントツで関心があるということがわかります。
自分でかかわるとなるとやはり切花は介護レベルが上がると大きく減少しますね。
しかし、教室など人とコミュニケーションをとる場所への参加は増えていますので人的な支援があれば人とかかわることでイキイキとした生活を送ることができるという可能性を感じます。
実際に脳波を調べたところ、花をカットした瞬間に前頭前野の血流が多くなりかなりの刺激を受けたことがわかっています。
たしかに花を切るってとても大きな決断でもありますので脳も刺激されますよね。
そんな高齢者を花でサポートしていくのが「フラワーファシリテーター」。
高齢者の実像はさまざまですが、おもに、頼れる人がいない、いきがいの喪失、会話が少なくなる、などのレポートが。
花を五感でとらえ季節を身近に感じながら花をいけることにより、脳をいきいきと活性化させる活動はこれからの時代に必要とされていくと思います。
ファシリテーターとは寄り添うという意味だそうですが、高齢者介護という視点だけでなくファシリテーターとして活動する側も大きな喜びを実感できるかもしれません。
「フラワーファシリテーター養成講座」の詳細はこちらです。
資格がなくても身近に高齢で介護が必要な方がいるのなら花をいけたり、水やりの手伝いをするだけでも十分にお役に立てるのではとおもいますが、仕事として取り組むなら資格があったほうが施設にとっても安心かもしれませんね。
園芸福祉士による花活
実は、園芸福祉士ってこのたびのセミナーではじめて聞いたのです。
花屋さんの中にもこういう活動に関心の高い方はすでにご存知だったかもしれませんが、ほとんどの店は自店の売り上げを伸ばすことに一生懸命でボランティア活動や介護、福祉活動などにはちょっと疎いのでは(私だけ?)。
でも、知ったのだからこれは役立てたほうがいいなと思って勝手に広報活動をしているというわけですが、3人目はひろしまね園芸福祉協会事務局長の進藤丈典氏の講演とフラワーアレンジメントの講習。
広島は園芸福祉活動が盛んで「花活」と称して花関係の業界を結んで活動をしています。
実際に自ら高齢者や障害者施設に行って花活をしている進藤氏の話はとても感動しました。
本当に花を触ったりアレンジをつくったりおしゃべりをしたりすることで人が変わっていく。
もちろん1回や2回で変化するわけではなく何度も何度も施設に行って薄紙を重ねるように人と人とのコミュニケーションを積み重ねていくから変化も訪れるのでしょう。
広島県人だけにカープは欠かせないらしい。
唐突にスライドに出てきて笑ってしまった。
ちなみに、カープの鯉の頭の模様は広島県の地図だそうですよ。
普段進藤氏ら園芸福祉士の皆さんが施設で実施しているフラワーアレンジとグリーンのフレーム仕立ての作品をみんなで作りました。
すごくカンタンで、悩ませないようにすべて規格が決まっていて切って挿してポットを組み合わせるだけのもの。
よく考えられています。
これをつくることによって会話が生まれたり関心が高まったり、、花は手段なんだな。
とはいえ、手段だから何でもいいわけではなくて多くの人が共感できるものでなくてはならないわけで、そうなると切花も園芸も植物という点で非常に身近な手段といえます。
だって私もつくりながら隣の見ず知らずの方と話したりして楽しかったですもん。
今回のセミナー、花の仕事をしている人よりも施設や教育の現場にいる人達の参加が多かったような気がしました。
これからもっともっと認知されてかかわる人達が増えていくことでしょう。
まとめ
*幸せはお金では買えないんだな
*生きる力を失わないようにすることが大切
*園芸活動は多人数で長く続けるといいらしい
*広島カープの鯉の頭は広島県の地図
*花は寄り添うための手段だが効果は絶大
「花をみるとほっとしたりなごんだりするっていうのはやっぱりホントなんだニャ。土をホリホリすると懐かしい気持ちになるのはネコだからかと思ってたニャ」
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