2016/10/29
売れる花屋は知っている切花の鮮度保持方法~花の呼吸で鮮度が変わる~
花びらの開きが遅いとそれだけ長く楽しめるということ。
売れる花屋はそんな花の咲き進みを抑えるコツを知っています。
切花の温度管理は呼吸の管理
店をやっていたとき、チューリップを仕入れたときなどはちょっと気温が上昇するとすぐにパァ~っと開いて「これ何の花?」なんてお客さまに尋ねられたことも。
植物は葉っぱの裏にある気孔を開いたり閉じたりすることで、酸素を吸って二酸化炭素を放出しています。
え?植物って二酸化炭素を吸って酸素を放出しているのでは??
・・それは光合成の場合です。
すなわち光合成で栄養をつくって、呼吸で栄養を細胞へと届けるのです。
暑い場所では気孔の開く時間が長いため呼吸量が多くなり、涼しい場所では気孔の開く時間が短いため呼吸量が少なくなります。
呼吸量が多くなると栄養をたくさん運ぶことになるため、細胞がどんどん活性化することに。
ということは成長が進み、そのぶん咲き進むスピードも早くなるのです。
*涼しいとき・・気孔が開いている時間が短い=呼吸量が少ない
「チューリップがパァ~っと開いてしまうのは気温が上がって呼吸が多くなるからなのね。だから涼しいところに飾ったほうが長く楽しめるってわけね」
ベストな温度は何℃?
では、いったい何℃が切花にとってベストな気温なのでしょうか。
もちろん種類によって違ってきますがものすごくざっくりといえば、15℃~17℃。
この温度ですとほとんどの切花に適用できます。
ただ、一年中店内をこの温度に設定しようと思っても無理なのでその場合はキーパーの設置が必要です。
キーパーとはその名のとおり花を温度管理によって保存する設備装置。
よく花屋さんでガラスの冷蔵庫のような中に花が入っているのを見かけますが、それがキーパーというものです。
↓キーパーを設置した店内の一例
キーパーで管理する場合の温度設定は10℃~15℃。
店頭に出した花のストックとしてとっておくわけですから切花にとってのベストな気温より低めに設定をし、呼吸量を少なくし成長を抑えておきます。
店によってはキーパーに入っている切花をそのまま出して販売するところもありますが、あまりオススメできません。
理由は、キーパー内の温度とお客さまの飾る場所の温度との差が開きすぎるため逆に花が一気に咲き進むから。
切花には温度差が非常にストレスなのです。
ですので、販売するときは必ずキーパーから出して店頭で最低3時間は普通の気温になじませてからにしたほうが。
*キーパーの温度設定は10℃~15℃がベスト
「そうか!10℃からいきなり20℃になるよりも10℃→15℃→20℃のほうが人間だって体がラクだよね。花もおんなじなんだな」
花による管理温度の違い
花の鮮度は呼吸によるものということがわかりました。
では、呼吸の量を少なくすればするほど花の持ちがよくなるのでしょうか?
答えはNO。
多すぎる呼吸量は切花に過度な成長を促して老化を早めますが、少なすぎると今度は栄養が運びきれずにしおれてしまうことに。
このへんのバランスが結構大切なんですよね。
花の種類によっても違うのに、じゃあ、どうやって見極めればいいのでしょう。
見極めポイントの一つは「原産地」。
たとえばアンスリウムは熱帯アメリカが原産なので、暑さには強い、でも寒さには弱いということがわかります。
なので、アンスリウムの場合は夏など気温が高い時期は店頭にそのまま出しておいても大丈夫ですし、逆にキーパーに入れて冷やしてしまうと茶色くなってしまいます。
ほとんどの出荷されている切花は上記の温度管理で大丈夫ですが、初めて仕入れたものやいまひとつよくわからない種類のものについては、原産地を調べることで管理方法がわかる場合が多いです。
*管理温度がわからない種類は原産地を調べて判断する
「てことは、暖房が効いている暖かい部屋の中なら、冬でもアンスリウムなど熱帯の花は部屋に飾って楽しめるってことね^^」
自然管理のコツ
キーパーを設置している店はその中に入れて温度管理ができますが、キーパーを設置しないで自然な状態で管理している店も多くなってきました。
自然管理の花屋は、とてもナチュラル感のある店を演出できますが、キーパーに頼ることがないだけに花の管理や知識が必要です。
店舗が小さかったり、予算が少なかったり、ポリシーとして自然管理を徹底したかったりと理由はいろいろです。
ちなみにパルテールは開店当初からずっと、自然管理のみ。
理由は上記の3つ全部が当てはまります。
↓自然管理の店舗の一例
そんな自然管理の店が切花の鮮度を保つコツのひとつはこまめな仕入れ。
温度管理や品質管理による鮮度保持はもちろん大事なのですが、そもそも新鮮な花が常に店頭で販売されていればいいわけです。
あ、キーパーを設置している店の花が新鮮じゃないといっているわけではありません。念のため。
一般的に切花は生産されてカットされて出荷されて市場で競られて店頭で販売されてお客さまのもとで飾られる、という流れになっています。
なので店頭で販売されるまでにはカットされてから少なくとも2日はたっていることに。
仕入れた花をできるだけ早くお客さまのもとで飾ることができれば、店頭での温度管理に過度にナーバスにならなくても、必要最低限の管理ができればいいのですからそれにこしたことはありません。
そのためには仕入れすぎず、かといって少なすぎず、という商品管理が重要になってきますが、簡単に言えば「売れるぶんだけ仕入れる」ということ。
そしてもうひとつのコツは、「季節にあった花を仕入れる」こと。
自然管理ですから、不自然な季節の花は店頭に置かないようにします。
たとえば、真夏にバラは置かないとか真冬にダリアは置かないとか。
今は季節に関係なく一年を通していろいろな花が出荷されています。
自然管理を徹底するなら、選ぶ花も自然の季節に合わせた種類を仕入れ、季節にあっていない、またはその季節には弱い品種のものなどはいくら仕入れたくても仕入れない勇気も必要になってきます。
*「こまめな仕入れ」
*「季節にあった花を仕入れる」
「そういえば、花屋って季節を感じる場所のはずなのにいつも同じような花があるような。。季節感は大切にしたいね」
まとめ
植物が呼吸しているなんて。。と思った方もいるのでは。
切花の鮮度保持は水の吸い上げだけではありません。
呼吸も大きな役割を担っているのです。
切花の呼吸のしくみを理解してアドバイスできると、よりいっそうお客さまに花をながく楽しんでいただけるようになりますよ。
何かわかりづらいこととかありましたら、お気軽に問い合わせまたはコメントしてくださいね。